僕の家の前には工場がある。
工場の北側はいつも日陰になっていて、雪が溶けるのが毎年遅い。
周りはとっくに春全開になっていても、その工場の前だけに今年も雪が影に沿い残っていた。
いつなくなるんだべか
そんな想いを抱え、僕は毎朝起きて見守ることにした。
1日、1日、また1日。
少しずつ残っている雪も消えて行き、最後にぽつんと残った雪の塊を見たのが最後。
次の日からそのことをすっかり忘れ、肝心な最期を見届けることはできなかった。
いったい何の為に見てきたのか。
春が我が心を溶かしたのか、そう、どうでもいいことだった。
僕は歯医者に通っている。
検索で良さげなクリニックを見つけたのが昨年の10月くらいだから、もう半年以上通っている。
最近の歯医者は人を通わせ続けるテクニックがある。
啄木鳥のように首を縦に振ることにこ慣れた日本社会に於いて、デンタルドクター略してデンタリスト(注・造語デス)のおっさることを鵜呑みにしていると1年は通うことになる。
違う目的で通っても最期は何故か虫歯の治療をすることになる。
人それぞれ歯の性質が違う。僕は虫歯になり易い。エナメル質が弱いのだ、きっと。
そして治療is winding road。
1本、1本、また1本。
少しずつ残っている虫歯が消えて行き、最後にぽつんと右奥歯の虫歯だけが残っている。
あと1回通ってこれが治ったらどうなるのだろう。
そもそもいったい何の為に通っていたのか。
まあそんなことはどうでもいいことだった。
僕は歯医者に通っている。
2。
つづく↓
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